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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(オ)816号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人松岡益人の上告理由について。

論旨は憲法違反をいうけれども、その実質は原審が民法第一条の適用を誤つたという単なる法令違反の主張にすぎない。

ところで、原判決の確定するところによると、本件土地三一〇坪六合五勺のうち上告人において第一審相被告永井与八、同清水杢市にそれぞれ建物敷地として占有使用させている部分の面積は合計三〇坪であるというのであるから、割合にして僅か十分の一弱にすぎないことは所論のとおりである。

しかし、原審は、なお、本件土地は道路に沿つた海岸の波打ちぎわに存する砂地で、前記三〇坪及び上告人所有建物の敷地一二坪を除いた残余の部分はとり立てていう程の用途に使用されているものでない事実をも認定しているのであつて、このような事実関係のもとでは、たとえ前記永井及び清水に占有使用させている部分の面積が本件土地の総面積に比し僅かであつても、右占有使用につき賃貸人たる被上告人の承諾がない以上、被上告人は本件土地全部につき上告人との間の賃貸借契約を解除し得るものと解すべく、右解除権の行使をもつて権利乱用というのはあたらない。されば、この点に関する原審の判断は正当であつて、論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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